斉藤道雄『悩む力 べてるの家の人びと』。

投稿者: | 2014年2月16日

北海道の浦河町に「べてるの家」という施設があります。
統合失調症など、精神的な障がいをかかえた人たちが集まる生活共同体です。

ジャーナリストの斉藤道雄さんがべてるの家を取材し、
まとめた本が『悩む力 べてるの家の人びと』です。

精神的な障がいというと、自分とは違う世界のように感じる方もいるでしょうか。

でもこの本で語られることは、自分とは違う世界の話ではありません。
誰もがかかえる悩みやつらさについて、ちょっと見方を変えるヒントがあります。

以下、斉藤道雄さんが行ったインタビューや、当事者同士の会話からの抜粋。

・-この病気ってなんですか。
「もうひとりの自分とのケンカ。もうひとりの、自分が描いている理想の自分と、ほんとうの自分が格闘して、自分とつきあうのに疲れたり、楽しくなったり怒りたくなったり、泣きたくなったり。自分と向きあっている人ほどこの病気になりやすいと思います。ほんとに真剣に自分と向きあってると、よくわからないけれど、どうつきあっていいか、わからなくなって発病したりするんだと思います。自分とうまくつきあえなくなって発病するんだと思います」

 だから、いまはもうあまり自分とだけ向きあわないようにしている。

「失敗してもいいやとか、だめになってもいいやとか思って。ほんとうにそう思ってるわけじゃないんだけど、なんか適当でいいなあみたいな。無理して明るくしたり、変に自分を作ったり、しなくなりました」

・「だめなままの自分」がほんとうの自分なんだという現実を思い知ったとき、これが現実なんだと・・・・・・そこではじめて妄想の世界から離れることができて、自分が見えてきました。だめなままの自分が受け入れられない。それがために、人からどう見られているかが気になってしかたがありません。でも、じっさいは他の人が見ているイメージは自分がつけたイメージでした。それが、一番はじめに暗闇のなかから見えてきたことでした。

・遠回りをして、やっとだめなままの自分でいいということがわかった。自分ひとりでさんざん悩んでいたときは、あきらめるなんてことはできなかった。それができるようになったのは、自分以外の人の話を聞くことだった。そうして自分ではどうしても切れなかった悩みの悪循環を断ち切ることができたと思う。

・「ああ、もう一生、この病気と戦うっていうか、まとわりつかれて」
 「絶望的な気持ちにならない?」
 「ちょっとなるんだよね」
 「私もそういう時あったよ。この苦しみはもうなくならないのかなあとか思ったら、ほんとに生きてんのもつらいと思ったわ」
 「なんかもう、衝動的に死にたくなるんだわ。ぶわーっと死にたいっていう気持ちがね、急にくるような感じがするんだわ。もう、こうやってね、くおーって締めたくなるようなね、自分の首を。それで命を。だから、それがこわいんだよね、そういう気持ちになるのが、なるんじゃないかと思うのが」 
 「でも、死んじゃだめだよ。ほんとだよ。そこがいちばん肝心なところ」
 「俺、ちょっと思ったんだけどさ、死んでもいいって、ま、あの、発狂してさ、発狂して死んじゃっても、それでもいいんじゃないかって思うとね、かえって楽になった」
 「わかるような気がする。苦しみが出てきたら、その苦しみごと、ぽんと放り投げることができるようになると楽になるんだよね」
 「受け入れるってこと?」
 「受け入れるっていうか、手放すっていうか」
 「あきらめる」
 「そうそうそうそう。そうしたらね、だいぶ落ち着くよ。あたしの経験からいってもね、ああ、これはもうなんともならないなって思って、ああもうこりゃだめだと思って、あきらめちゃったら、けっこうすっと、楽になれるっていうかね。いつまでも戦っているとね、どんどんつらくなるわ、うん」

つらくて死にたくなる
そんなこと、そうそう起こらないかもしれません。
でも死にたくなるほどのつらさはなくても
みんないろんな悩みやつらさはあるんじゃないかな。
それぞれの悩みやつらさと、日々戦ってるんじゃないかな。

この本はそんなときにちょっと見方を変えてくれる。

もちろん、がむしゃらにがんばることが必要なときもある。
でもそれだけが人生じゃない。
あきらめるとか
手放すとか
一見するとネガティブに思える行動が大事なときもある。

上に上に行こうとするんじゃなくて
降りていくことで、見えてくるものもあると思うのです。


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