赤瀬川原平『新解さんの謎』

投稿者: | 2014年3月19日

『舟を編む』を観ました。
日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞して、話題になりましたね。

そこで今日は映画の感想・・・ではなくて
『舟を編む』を観たら、読みたくなった、
辞書についての一冊。
赤瀬川原平『新解さんの謎』です。
 

新解さんのこと、みなさんご存じでしょうか?
三省堂発行の新明解国語辞典のことです。

この辞書、なんだかおかしいんです。
何がおかしいかうまく説明できないのですが
なんとなく人間味を感じる辞書なのです。

辞書ってふつうはことばの正しい使い方がのっていると思いませんか。
万人が認める正しい意味。

でも新解さんは違うんです。
個性豊かで我が道をゆく辞書です。

例えば

【動物園】
生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設。

(『新解さんの謎』p127)

えっ
動物園てそんな恐ろしいところだったの・・・とか。

【恋愛】
特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。

(『新解さんの謎』p8)

恋愛は、まれにかなえられて歓喜するのか・・・
妙に納得・・・など。

 
新解さんは、ことばの用例もふしぎです。
例えば

【すなわち】の用例

「玄関わきで草をむしっていたのがすなわち西郷隆盛であった」

(『新解さんの謎』p32)

これ、西郷隆盛の用例ではないんですよ。
【すなわち】の用例です。
どうしていきなり西郷隆盛が出てくるの・・・。

ほかにも
【嬉しい】の用例

あいつもだめだったかと思うと、嬉しくなっちゃう。

(『新解さんの謎』p121)

うーん。
人間くさい。

とにかくツッコミどころが満載の辞書なのです。

 
こんな魅力いっぱいの新解さん。
でも、『新解さんの謎』がおもしろいのは
新明解国語辞典を紹介しているから、だけではないのです。
それは赤瀬川原平のツッコミのうまさ。

赤瀬川原平の視点が独特で、そのツッコミが的確なので
新解さんのおもしろさが倍増します。

そして彼は新解さんの魅力について
“攻めの辞書”だと言います。

前にも書いたが、新解さんの辞書の特徴は、守りでなく攻めの辞書だということ。辞書に限らず学問の世界というのは、できるだけミスを指摘されないように、守りに徹して、堅苦しく堅苦しくやっていけば間違いはない。でもそうすると正しくはなっても明解にはならない。しかしそういう不明解な正しさなんて何ぼのもんじゃ、というので新解さんは攻めに回る。

新解さんの凄いのはここのところだ。辞書の身で、よく攻めに回れるもんだ。

(『新解さんの謎』p43)

 

本は好きだけど
忙しくて読書のためにまとまった時間がとれないという方。
こまぎれ時間でも読めるのでおすすめです。
ゆる~く笑えますよ。

ちなみに、この記事での新明解国語辞典の文章は
すべて『新解さんの謎』から引用したものです。
現在、三省堂からは第7版が出版されていますが
そちらの内容は確認していません。
あくまで、『新解さんの謎』が出版された当時
新明解国語辞典第4版の内容ですので、その点はご了承ください。

いまの新解さんはどうなっているのか気になります・・・。
変わらず我が道を突き進んでいてほしいな。


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